report.02=2003/5

ルポライターA氏からの超超貴重な超古代レポート

伝説の大陸“アトランティス”の驚くべき全貌

マルセイユには2万7千年前の海底洞窟壁画が!!
与那国島沖と並ぶ高度な文明が、やはり地中海にも!?
2003年5月緊急レポート

今から1万2千年前、大西洋のどこかに消えたという「アトランティス大陸」は、地中海西端のジブラルタル海峡付近に沈んでいた!この世紀の大発見は、人類史にどんな影響を及ぼすのか? そして問題の海域には何が眠っているのか? 先週号に引き続き最近レポート第2弾を紹介しよう! 

取材・文/有賀 訓

地中海には2万7千年前の海底壁画が眠っていた!

 本誌は、失われた伝説の大陸「アトランティス」が、地中化西端のジブラルタル海峡付近に沈んでいるという大スクープ情報を前号でレポート! この世界が注目する新説を発表したのは、フランス/エクサンプロバンス大学のジャック・コリーナ・ジラール教授。地質学と先史学、ふたつの博士号をもつジラール教授は、世界各地に伝わる“大洪水伝説”を詳しく分析して、アトランティス伝説もそのひとつだと結論づけた。
 今から約2万年前の氷河期の終わりに地球上の氷が急速に溶け始め、約1万5千年間に海面が120m以上も上昇した。その時代に海岸部にあった先史人の生活拠点は次々に水没し、“海が陸地を襲う”という伝説が生まれた。
 そして地中海沿岸地域でも、1万2千年頃に水没したアトランティス伝説が残った。それが古代エジプトに伝わり、2300年前頃にギリシャの哲学者プラトンが書物に記した。
 プラトンによれば、アトランティス王国はジブラルタル海峡のすぐ西側にあったという。だが、中世には水没地を大西洋だとする考え方が強まり、プラトンが記した“大いなる土地(繁栄した土地)”が“大陸”に誤訳された。そして近代には、大地震や火山噴火で水没したという説が唱えられた。しかしジラール教授は、こう反論する。
「現代地質学では、大西洋地域のなかで1万数千年前に大陸と呼べるような島が地殻変動で沈んだという仮説は、完全否定されています。本当のアトランティス水没原因は、気候変動による海面上昇でした。そして沈没地を探る唯一の手がかりは、プラトンの記述しかないのです」
 そこでジラール教授はジブラルタル海峡付近の精密海図を詳しく調べ、海峡西側の東西約100キロ、南北数十?、平均水深約130mの海域に沈む、水深約100〜50mほどの丘のような7つの海底地形「スパルテル海底群島」を発見した。それらは、2万年前に海上にあったはずの陸地跡だった。
 中心部のスパルテル海底島(14×5キロ、水深56m)が海面上昇で水没した年代は、教授の計算では約1万1400年前。プラトンが記したアトランティス水没年代と一致した。
「私が発表した水没年代については、他の地質学者たちも同じ試算値をだしました。そしてプラトンが記したスパルテル周辺の古代地名や説明文から、やはりスパルテル海底群島がアトランティス伝説のモデル地に他ならないと判断したのです」(ジラール教授)
  その理由には後ほどふれるが、今のところまだ正式な現地調査は行われていない。にもかかわらずジラール教授の新仮説は、欧米の地質学者や先史学者たちの間で支持者が増え続けている。なぜならジラール教授は、ただ古代文献や海底地形図だけを頼りに机上の仮説を組み立ててきたわけではないからだ。過去に世界各地の古代遺跡調査に参加し、なかでも1990年代前半に行われた「コスケ海底洞窟」の調査活動は、大発見をもたらした。
 この海底洞窟はマルセイユ南方の地中海沿岸にあり、1980年代に水深約40?の場所で入り口が見つかった。その後、ジラール教授らの調査隊が洞窟内部の調査を敢行して、先史時代に人が暮らしていたことを確認した。
「入り口から300mの地点に空気が閉じこめられた広いエアドーム空間があり、その岩の壁面に、人の手の平や動物などのリアルな絵画が無数に描かれていたんです」(ジラール教授)
 ヨーロッパでは19世紀末から20世紀初めにかけて、南フランスの「ラスコー洞窟」と北部スペインの「アルタミラ洞窟」で1万7千〜1万4千年前頃の動物壁画が発見された。しかしコスケ遺跡の壁画は、世界で初めて海底洞窟内部で発見された。しかも壁画顔料の化学年代測定で、手の平が約2万7千年前、動物は2万年前頃に描かれたことがわかった。
 今回の「アトランティス発見!」のスクープ情報を提供してくれた、フランスの歴史ジャーナリスト/エマニュエル・シャニアル氏はこう説明する。
「中部ヨーロッパが厚い氷に覆われていた氷河期の頃から、地中海沿岸には高い芸術的センスをもつ先史人が生活していたのです。コスケ洞窟の動物壁画には牛や馬、山羊などの他に、今は棲息しないアザラシやペンギン類が描かれていました。おそらく氷河時代の地中海地域は、動植物や人間が暮らしやすい気候環境だったのでしょう。
 だから地中海の先史文化は、順調に発展しながらスパルテル=アトランティス文明へ継続していったという見方が成り立ちます。スパルテルの発見は、教授が過去に手がけてきた研究の延長線上にあるわけです。これから先に注目されるのは、スパルテル地域の文明がどの程度のレベルに達していたかという点にしぼられていくでしょう」

アトランティスにも大型石造遺跡が存在する?

 では、スパルテル海底群島には、どんな遺跡が眠っているのか? この最大の興味ポイントについて、ジラール教授は語る。
「1万年以上前の遺跡ならば、狩猟時代の文化レベルにあったという無理のない推理からスタートすべきでしょう。そうであれば、まだ大規模な都市建造物など必要とされなかった時代なので、皆さんが夢想するような発見はないかもしれません。しかし、あくまでも現地調査は行われるべきで、近いうちに必ず実現させたいと思います」
 この慎重意見は、科学者として当然の選択かもしれない。しかし現状では、その慎重さが裏目に出ているという見方もある。前出のエマニュエル氏によれば、
「なにしろ海底遺跡の発掘は、陸上よりも費用がかかります。昨年、ジラール教授はさまざまなメディアや団体と接触し、調査協力を求めました。その結果、多くの人たちが関心を示しましたが、教授自身が海底都市のような大発見については謙虚な姿勢をみせたため、昨年中の調査計画はペンディングになってしまったようです」
 過去2千数百年間、ヨーロッパの人々が抱いてきたアトランティスのイメージは、古代ギリシャ文明をしのぐような巨大石造建築物や、整備された都市の姿だった。もしTV局などが多額の資金を使って、そうしたイメージとはかけ離れた映像しか手に入らなければ、多くの視聴者からブーイングの嵐が巻き起こるだろう。
 しかしスパルテルの海底には、ジラール教授が控えめに予測するような未開遺跡しか存在しないのだろうか? その疑問について、前回にもコメントをいただいた奈須紀幸博士(元東京大学海洋研究所所長)は、ジラール博士とは異なった考えを述べてくれた。
「プラトンの記述が絶対的な真理ではありませんが、驚くほど具体的にアトランティス王国の様子を描写している点は、無視できません。何よりも、ジラール教授が作製した海底地形図には、1万年以上前の陸化時代に、ヨーロッパ文明のベースとなるような文明都市が発達していても不思議ではない古代環境が読みとれます」
奈須博士が注目するの古代環境のひとつが、スパルテル海底島の南側に横たわる深い陥没地形だ。面積はスパルテル海底島とほぼ同じで、付近の平均水深よりもはるかに深い500mにまで落ち込んでいる。
「これは地殻変動による陥没ではなく、早い潮流によって海底が削り取られた“海釜”という地形だと考えられます」(奈須博士)
 約200万年前から氷河期は少なくとも4回訪れ、温暖化とともにジブラルタル海峡は大西洋側から海水が大量流入する激流地帯に姿を変えてきた。この海釜もそうした激流によって作られたが、逆に海峡が陸化した氷河期の間は“淡水湖”に変わっていた可能性が高いと奈須博士は分析するのだ。
 前出のコスケ洞窟付近の海図にも、1万年以上前の陸化時代に大小の湖沼があった様子がうかがえる。これらの水源を、地中海沿岸に暮らした先史人たちが利用したことは間違いない。そしてスパルテル海底群島周辺でも、大淡水湖から水路を引いて農耕文化が発達していたかもしれない。それが、プラトンが記したアトランティス王国の大運河網の実体だったのではないか!?
 まもなく正体を現すはずのスパルテル海底遺跡の文化レベルは決して過小評価できないと、『神々の指紋』など古代史研究家G.ハンコックの著作翻訳で知られるジャーナリスト大地舜氏もいう。大地氏は今、昨年1月にインド北西部で発見された「カンベイ湾海底遺跡」の取材活動に取り組んでいる。
「この遺跡は、5〜6千年前に栄えたインダス流域文明の遺跡地帯から、さらに30?以上沖の海底(水深約40?)で発見されました。水没前の大河沿いに繁栄した都市遺跡で、大型の家屋、倉庫、水浴場跡などが約9?にわたって残り、さらに先にも続いていると推定されています。材木片、土器片、装身具、人骨などの遺物が大量に引き揚げられ、化学年代測定では9500〜1万年前の遺跡だとわかりました。地上に残された古代インダス文明遺跡よりも5千年早い時期に、そのルーツとなる都市文化が出現していたのです。
地中海の島々の陸上にも、考古学の調査対象とされてこなかった1万年前頃の先史遺跡が数多くあり、それらの謎解きがスパルテル海底遺跡の研究調査で大きく前進しそうな予感がします。ヨーロッパ先史遺跡には巨石建造物が多いので、ジブラルタル周辺の海底でも想像を超えた大型石造都市が発見されるのではないでしょうか」
もうひとり、今や世界に名が轟く「与那国島海底遺跡」の研究調査に取り組む琉球大学理学部/木村政昭教授も、スパルテル海底調査の実現へ期待をかける。
「そのシュパルテル海底群島が沈む場所は潮流の早い海域だと思いますが、フランスの海洋探査技術は世界最高水準にあるので、とにかく一刻も早く現地の学術調査を実施して何らかの遺跡や遺物を発見してほしいものです。奈須先生もいわれるように、偉大なヨーロッパ文明のベースとなった先行文明が、地中海周辺の大陸棚に眠り続けてきた可能性は非常に高いと思います。現実的にアトランティス伝説が、古代エジプト、ギリシャの時代から伝わってきたのですから、その再検討こそ大発見につながる最良の方法でしょう」
 2万年前から始まった急激な海面上昇は、地球気温と氷融解のバランスが釣り合った5〜6千年前に止まった。その後に建造された遺跡が最古の文明だと誤解されてきたが、本当の人類文明のルーツは海の底に沈んでいるのだ。
 つい最近、タイ/プーケット島北西のシミラン諸島でも大規模な石造海底遺跡が発見された。その海域にも、2万年以前に多くの先史人たちが暮らした「スンダ亜大陸」が沈んでいる。5〜6千年前に、いきなり世界中の古代文明が誕生したという矛盾だらけの歴史常識は、世界各地の海底から同時多発的に出現し始めた先行文明遺跡によって完全に突き崩されようとしている!
 そしてシュパルテルの海底にも、プラトンが腰をぬかすような未知の大規模遺跡が沈んでいると信じたい。今後も続報が入り次第、真っ先に読者へ報告しよう!